トピック & ニュース
2026.08.27 EVENT REPORT/東京 インターナショナル バーショー 2026~ スマッシュ ザ ワールド ~
世界各地からバーテンダーが集結! 日本最大のバーショー「東京 インターナショナル バーショー2026」レポート

5月9日(土)・10日(日)、日本最大級のバーイベント「東京 インターナショナル バーショー2026」が開催されました。12回目を迎える今年は、過去最多となる62の出展者が東京ドームシティ・プリズムホールに集結。国内外のブランドとトップバーテンダーたちがその日限りのスペシャルなパフォーマンスやカクテルを来場者に披露しました。バーおよび飲食シーンをけん引する、熱気にあふれたイベントの模様をレポートします。
文:倉石綾子 / 写真:三井公一 / 構成:Contentsbrain
東京から世界へ、カクテルとバーの文化を発信して"世界を打ち砕く"――「Smash the World」をテーマに掲げた今回。“トラベリング・ミクソロジスト”として世界中を飛び回ってカクテルの伝道を行うJoerg Meyer(ヨーグ マイヤー)さんらをスペシャルゲストに迎えたトークセッションを目玉に、マスタークラスやフレアバーテンディングパフォーマンスなど多彩なコンテンツが繰り広げられました。両日とも開場前から多くのバーファンが詰めかけ、エントランスには長蛇の列が。2日間でのべ約13,900人の来場者を集め、入場制限がかかるほどの盛況ぶりでした。
メーカーの出展者ブースでは、テイスティングのみにとどまらず、プロジェクションマッピングや映像を駆使して視覚に訴える演出、世界のトップバーテンダーによるゲストシフトなど、趣向を凝らしたカクテル体験の提供が目を引きました。
バー愛好家たちに向け、WA-SPIRITSの可能性をアピール
「WA-SPIRITS(和スピリッツ)」を世界に発信する三和酒類は、寄席の高座を思わせる白木のブースを設け、今年ボトルをリニューアルした「TUMUGI」と、昨年日本上陸を果たした「iichiko彩天」を使ったカクテルを提供しました。カクテルを手がけるのは、バーファンにはおなじみの日米の著名バーテンダー。「日米のトップバーテンダーたちの競演から、それぞれが考えるWA-SPIRITSを感じてほしい」(三和酒類 営業本部 営業課・井上文太)という、当日のパフォーマンスをご紹介しましょう。
今年、パフォーマンスを披露してくれたバーテンダーは、計8名。日頃から「iichiko彩天」や「TUMUGI」をカクテルに活用してくださっているバーテンダーが一堂に会しました。日本勢は、岡﨑ユウさん(BAR AVANTI/東京・銀座)、鹿山博康さん(Bar BenFiddich/東京・新宿)、後藤啓輔さん(Bar K-9/愛知・名古屋)、髙橋裕也さん(ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜/神奈川・横浜)。米国からは、漆戸正浩さん(Katana Kitten/NY)、後藤健太さん(Bar Goto/NY)、百瀬ジュリアさん(Bar kumiko/シカゴ)、渡邉琢磨さん(Martiny's/NY)です。
当日は8名のバーテンダーが4つの時間帯に分かれ、各時間、日本・米国のバーテンダー1名ずつがカウンターに立ち、カクテルメイキングを行いました。初日は日本勢が「TUMUGI」、米国勢が「iichiko彩天」を、2日目は日本勢が「iichiko彩天」、米国勢が「TUMUGI」を使ったカクテルを提供しました。
それぞれが考案した2種のレシピとそのポイントをご紹介します。まずは日本を拠点とするバーテンダーから。
「BAR AVANTI」岡﨑ユウさんのカクテル
TUMUGI Presso
「1杯で飲み足りてしまいがちなコーヒーカクテルを、もっと軽やかに、最後までおいしく飲んでいただきたいと作成したカクテルです。山椒パウダーで甘さを抑えて後を引く余韻を醸し、カカオニブでわずかな苦味をプラス。『TUMUGI』のふくよかさを前面に押し出しました」(岡﨑さん)
軽やかなパッションフルーツが「TUMUGI」の柑橘のニュアンスを引き立て、1杯目にぴったりの爽やかさです。
彩晴(いろは)
「『iichiko彩天』は骨太なアルコール感が特徴ですが、これをミルクウオッシュすることで麹由来のふくよかさや伸びはそのままに、まろやかかつクリアな飲み口に仕上げました。今回は趣向を凝らしたレシピにしましたが、BAR AVANTIではリッキー(レモンとソーダ)のようなシンプルなレシピも好評なんですよ」(同)
「Bar BenFiddich」鹿山博康さんのカクテル
麹 Watermelon Summer
「普段Bar BenFiddichでは『iichiko彩天』を使って出すことが多いカクテルなのですが、今回は『TUMUGI』を使いました。このカクテルでも使用していますが、スイカは麹と香りの相性が良いと感じます。『TUMUGI』は麹の力強さとボタニカル感が融合した唯一無二の味わいが魅力ですね。個性的ですが華やかさもあり、カクテルに使いやすいスピリッツだと感じています」(鹿山さん)
さらに、「『TUMUGI』はウリ系のフルーツやバニラとの相性が良くて、ロングカクテルやデザートカクテルのベースに活躍してくれる」(同)とのこと。
彩果実(いろどりかじつ)
鹿山さんは、「『彩果実(いろどりかじつ)』は、1杯のなかの総合的なバランスを意識した」と言います。
「名前の通り、麹と果実が合わさったようなカクテルになっています。『TUMUGI』はロングカクテルにすることが多いですが、『iichiko彩天』はロックスタイルがいいですね。『彩果実』のようなウリ系のほか、濃厚なバニラ風味やクリームで仕立てるデザートカクテルにもマッチします」(同)
「Bar K-9」後藤啓輔さんのカクテル
「Re:TUMUGI」
「『TUMUGI』にマッチする日本らしい素材を考えていて、よもぎを思い浮かべました。『TUMUGI』の麹感とよもぎ茶という、日本らしくて繊細な、けれども言葉で表現しづらい味わいをテーマに掲げてみました。酸味と甘味を加えるリレ・ブランと、甘い香りのカカオホワイトはカクテルでおなじみの組み合わせですが、麹のふくよかさ、よもぎのかすかな苦味と合わせることでありきたりでないニュアンスが生まれます。
カクテル名の“Re:”は“リターン”の意味です。彩天がカクテルシーンで注目を集めている今、『TUMUGI』もお忘れなく!(笑)ということで、リターンと名付けました」(後藤啓輔さん)
静彩(せいさい)
「静彩」は、麦の香りを生かした“飲むスイーツ”。ホワイトチョコレートでファットウオッシュしているため、甘いチョコレートの香りがふわりと立ち上がります。
「『iichiko彩天』は麦チョコやポン菓子を思わせるモルティーさがユニークで、日本人にはどこか懐かしさを覚える味わいに通じます。こうしたパーツごとの要素をひもといていくと、カクテルの幅が広がります」(同)
「ザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜」髙橋裕也さんのカクテル
Wow Tumugi Soda〈輪を紡ぎソーダ〉
「『TUMUGI』に柚子の爽やかさを合わせ、ソーダでアップ。少しスパイシーで、ミントのような香りのするベネディクティン(フランスを代表する薬草系リキュール)が、麹のうまみを増幅してくれます」(髙橋さん)
さらに、髙橋さんは「TUMUGI」について、「ボタニカルの構成こそジンと似ていますが、まったく異なるスピリッツ。レシピ考案のポイントは、麹のニュアンスや焼酎感を日本のスピリッツらしさをどう表現するか」だと言います。
「王道かもしれませんが、今回は柚子を合わせることで表現しました。実は、日本の柚子リキュール、フランスのベネディクティン、イタリアのフェルネットブランカを使用し、3つの国の“WA”を紡ぐ=三和なんて裏テーマもあります」(同)
Oedo Fashioned
「日本人バーテンダーにとって、和のスピリッツで自分のクリエイティビティーを表現できることは大きな喜びです。カクテルの副材料についても、江戸時代からあるみりん、醤油、米、そして焼酎という、日本古来の素材にフォーカスしてみました。本格焼酎ベースのスタンダードカクテルになってほしいという願いを込め、海外のバーテンダーでも取り入れやすい素材で構成しています」(同)
続いて、NYやシカゴで活躍するバーテンダーたちのカクテルをご紹介します。まだ米国では入手できない「TUMUGI」を使ってのレシピ考案に際しては、さまざまな角度からこのスピリッツの要素をひもとくことで予想外の発見があったようです。
「Katana Kitten」漆戸正浩さんのカクテル
ファンシー麦茶
「『TUMUGI』をテイスティングすると、グレープフルーツのような柑橘系の香りの中にシナモンなどのスパイスのニュアンスと麹の余韻を感じます。そこで、これらの要素を複合的に楽しめるパンチスタイルのカクテルを作ろうと考えました」(漆戸さん)
香ばしい麦に柑橘やスパイス、ジャスミンが香り立つ爽やかな味わいで、昼下がりの提供時間にぴったりの1杯となりました。
MEGURONI
「ネグローニのベーススピリッツを『iichiko彩天』に変えることで、麹のうまみによりコクが生まれます。ここに、日本らしい風味として黒糖梅酒を、さらにデグロフ・ビター・アペリティーボ(イタリアン・スタイルのビターリキュール)の苦味をアクセントに、『iichiko彩天』とのクッション役としてジュネヴァ(ジュニパーベリーなどの風味を加えたオランダ生まれのスピリッツ)を加えているのがポイントです」(同)
「Bar Goto」後藤健太さんのカクテル
ベルガモット & 麹
うまみマリー
このカクテルは、2種類の本格焼酎を使っているところがポイントで、出汁(だし)をインフューズした「いいちこシルエット」をベースに、「iichiko彩天」を調味料代わりに加えて味わいに深みをもたせています。
「『iichiko彩天』は麹由来の濃厚かつ複雑な味わいが特徴で、それが面白さであり難しさでもあります。このレシピでは『iichiko彩天』に出汁の風味を移そうと思いましたが、『iichiko彩天』のベースがパワフルで味わいを乗せることが難しいので、2種類の『いいちこ』を使い分けて、別でとった出汁を合わせました。そこに大分産トマト、レモン、塩で味を調えています。個人的に、『iichiko彩天』にはセロリのような苦味系のもの、もしくはコーヒーやチョコレート、クリーム系などほっこりした温かみのある味わいがマッチすると思っていて、さまざまなレシピを考案して楽しんでいます」(同)
「Bar kumiko」百瀬ジュリアさんのカクテル
Rose
百瀬さんにとって「TUMUGI」は、本格焼酎とは味わいも個性もまったく異なる別カテゴリーのスピリッツだと言います。そんな「TUMUGI」で仕立てた「Rose」は、「TUMUGI」のフルーティーなうまみや華やかな香りをバラとシェリーで引き立てたカクテルです。
「蕾から花が開き、咲き終わってドライになるまでのバラの一生をカクテルで表現してみました。ガーニッシュはライムピール。溌剌(はつらつ)とした香りとほのかな塩味を利かせると共に、鮮やかなグリーンが赤系の液色を引き立ててくれます」(百瀬さん)
Tomato
「5月のイベントということで、飲みやすくて軽い味わいのカクテルを考えました。自家製トマトウォーターでうま味、酸味、甘味を、カルパノ・ビアンコ・ベルモット(しっかりとした甘みと華やかな風味のスウィートベルモット)で複雑な甘みを、ソーテルヌ(ボルドー地方でつくられる甘口の白ワイン。世界三大貴腐ワインの一つ)でフレッシュなフルーティーさを加えています」(同)
「麹由来のスピリッツという新しいジャンルの素材を使ってのカクテルメイキングは、バーテンダーにとって大きなチャンス」と百瀬さんは語りました。
「Martiny's」渡邉琢磨さんのカクテル
オランジェッティーニ
「オランジェッティーニ」は、オランジェット(砂糖漬けのオレンジピールをチョコレートでコーティングした菓子)を紅茶と合わせていただくシーンをカクテルで再現した1杯。
「Martiny'sではジンベースで提供しているメニューを、ベーススピリッツを『TUMUGI』に変更して作成しました。ジンを思わせるボタニカル感、シトラス香と、ジンにはない麹由来のうまみを兼ね備えた『TUMUGI』に、紅茶、チョコレート、オレンジのニュアンスがマッチしていると思います」(渡邉さん)
麹 de ドルチェ
「『iichiko彩天』は骨格がしっかりしたスピリッツで、玄人受けする複雑さも備えているのでエッジを効かせたカクテルのベースにぴったり。そこで、柑橘以外の素材で酸味やフルーティーさを持たせてみたらどうだろうかと、思いつきでハイビスカスを漬け込んでみたらこれが予想以上にハマりました。
ナッティーなノチェロのフレーバーを加えてみると、バナナを思わせる青っぽいニュアンスが生まれたので、大人のための『バナナ・ア・ラ・モード』のような1杯に仕立ててみました。甘いけれど甘過ぎない、複雑で重層的な香りのハーモニーを楽しんでいただけます」(同)
WA-SPIRITSを世界へ!
ユネスコ世界無形文化遺産登録を受けて高まる機運
2024年に麹菌を使用した本格焼酎や日本酒など日本の「伝統的酒造り」がユネスコ世界無形文化遺産に登録されたことを受け、和酒への注目が集まっているという背景もあり、来場者の反応も上々です。2025年に米国から日本に上陸した「iichiko彩天」は、カクテルベース・スピリッツとしてバーファンからの認知度も高まり、「こんな味わいなんだ」「想像以上にアルコール感がある」といったテイスティングコメントをいただきました。
一方の「TUMUGI」は、そのクリーンなボトルデザインの印象から、ジンを思わせるという声も聞かれました。使用しているボタニカルは大分のかぼすとミント、四国の柚子、瀬戸内のレモン、三ケ日のみかんと、ジンに使われていてもおかしくない和柑橘・和ハーブですが、麹が醸すふくよかな余韻は洋のスピリッツでは表現できないもの。カクテルを味わった後に「『TUMUGI』をストレートで試してみたい」というリクエストを耳にしました。WA-SPIRITSのカクテルシーンにおける可能性に、バー愛好家のみなさんも思いを新たにしたようです。
8人のバーテンダーそれぞれの解釈が楽しいWA-SPIRITSベースのカクテルメイキング。バーショーではWA-SPIRITSを広めたいと出展してきた三和酒類ですが、「ここ数年でその広まりや手応えを感じるようになってきた」というのは、営業本部 営業課の井上文太です。
「海外のバーテンダーが出汁やうまみ素材を使って麹感をダイレクトに表現している一方で、日本のバーテンダーは意外な組み合わせで重層感を出している印象を受け、面白いと感じました。スタンダードカクテルでも、ベースを本格焼酎に代えることで、麹由来の深みや奥行きを表現することができます。ウイスキーやジン、ラムとは別の面白さがあるということを、今回のパフォーマンスを通じてアピールできたように感じています」(井上)
国内外のトップバーテンダーには本格焼酎ベースカクテルの認知が広まってきましたが、今後の目標はさらに幅広い飲食店にアピールすることだといいます。
2日間を振り返り、営業本部営業課の久恒康裕は「国内のシーンにおいては、洋酒との味わいの違いを語れるバーテンダーに取り上げてもらうことで、新しい層へのタッチポイントが生まれている」と考えています。
「2日間の出展を通じ、バー愛好家のみなさんには『iichiko彩天』という焼酎を認知していただいていることを実感しました。これからは、焼酎とは何なのか、原材料によってどんな味わいの違いが生まれ、どんなポテンシャルがあるのかを積極的に発信していきたいと思っています。
私たちが目指すのは、世界のさまざまな都市のバーで焼酎のボトルが並んでいる風景を目にすること。そのためには昨年スタートしたカクテルコンペティションをさらに盛り上げ、いずれは世界規模の大会に成長させたいと考えています」(久恒)
焼酎を世界的なスピリッツに! そんな目標を掲げ、三和酒類の挑戦はまだまだ続きます。「iichiko彩天」「TUMUGI」をはじめとしたWA-SPIRITSの今後の展開にぜひご注目ください。
フォトギャラリー