Language
English Japanese

Topics & News

2026.10.28 

ハワイのクラフトカクテル文化との融合で見えた、「和スピリッツ」の可能性

髙橋裕也さん(左)とJustin Parkさん

「iichiko 彩 -IRODORI- カクテルコンペティション」初代日本チャンピオンである髙橋裕也(たかはし ゆうや)さんが所属する「ザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜」。同ホテルのラウンジに、「Bar Leather Apron」共同設立者兼ヘッドバーテンダーのJustin Parkさんを招いて、「iichiko彩天」をはじめとする本格焼酎、日本酒を使ったカクテルイベントが開催されました。

文:倉石綾子 / 写真:三井公一 / 構成:Contentsbrain


ハワイらしいカクテルで、本格焼酎の新たな表情を引き出すイベント

2025年に日本で初開催した「iichiko 彩 -IRODORI- カクテルコンペティション」は、本格麦焼酎「iichiko彩天」をベースに使ったカクテルの新たな可能性を探る大会。初代チャンピオンは、「ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜」の髙橋裕也さんでした。

髙橋さんが腕を振るうのは、「ザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜」の14階にある「THE KAHALA Lounge」。横浜・みなとみらいの夜景を一望できるこのバーラウンジで、不定期に開催されている「The Session」は、国内外の著名バーテンダーをゲストに迎え、その日・その場所でしか味わえないカクテル体験を創出するコラボレーションイベントです。2023年のスタート以来、多彩なゲストバーテンダーが毎回異なるテーマのもとにクリエイティビティあふれるカクテルを振る舞ってきました。

8月28日に開催された「The Session #29 -Hawaiian Night-」には、ハワイ・ホノルルの名店「Bar Leather Apron」から共同設立者兼ヘッドバーテンダーのJustin Parkさんが参加。髙橋さんと並んでバーカウンターに立ち、「iichiko彩天」「iichiko心和」ほか、三和酒類の本格焼酎、日本酒、ワインを、ハワイらしい素材やフレーバーでツイストしたカクテルを提供しました。


Justin Parkさん

2今回の「The Session」について、イベントを統括する「THE KAHALA Lounge」ヘッドバーテンダーの戸塚信弥さんは「『ザ・カハラ・ホテル&リゾート』のルーツであるハワイの文化をカクテルで掘り下げる、意義あるコラボレーションが実現した」と話します。

「『Hawaiian Night』というテーマが決まった時、ゲストバーテンダーはJustinさんしかいないと思いました。というのも、一昨年、私と髙橋でホノルルの『Bar Leather Apron』を訪れ、Justinさんのカクテルをいただいた際に、素材がもつ香りや味わいの要素をきめ細かに引き出し、繊細にまとめ上げる手腕や感性に感服したからです。

Justinさんなら『iichiko彩天』ほか、本格焼酎の新たな表情を引き出しながら、ハワイらしさをも感じさせるカクテルを生み出してくれるはず、そう確信しました。日本のバー文化に着想を得た繊細なホスピタリティと精度の高いバーテンディングで、お客様に素晴らしい一夜を提供してくれる――そんなイベントになると考えています」(戸塚さん)

このイベントのもう1つの見どころが、髙橋さんとJustinさんとの競演です。髙橋さんは、「iichiko 彩 -IRODORI- カクテルコンペティション」ジャパンファイナルでの優勝カクテル「Oedo Fashioned(オーエド ファッションド)」でイベントに華を添えました。日本×ハワイ、気鋭の日本人バーテンダーと、世界のバーシーンで高く評価されているトップクリエイター。2人のクリエイティビティが響き合う、特別な一夜となりました。


髙橋裕也さん

和のスピリッツにハワイの要素をミックスしたカクテル

「The Session #29 -Hawaiian Night-」のメニューにはJustinさんが提供する4種のカクテルが並びました。「Kope ʻIka」「ʻUla ʻUla」など、いずれもハワイ語にちなんだ名前が付けられています。

「iichiko彩天」を使った「Kope ʻIka」はハワイの素材をふんだんに使ったコーヒーカクテルです。ベーススピリッツの「iichiko彩天」に卵と砂糖を加えてシェイクしたフリップスタイルで、濃厚なコクとシルキーな口当たりが特徴的です。


ハワイの言葉でエスプレッソを意味する「Kope ʻIka」は、その名の通りエスプレッソマティーニから着想を得た、「iichiko彩天」がベースのカクテル

ハワイの言葉でエスプレッソを意味する「Kope ʻIka」は、その名の通りエスプレッソマティーニから着想を得た、「iichiko彩天」がベースのカクテル

「『iichiko彩天』は香り立ちがはっきりしていて、アルコール感のパンチもあるんです。骨太で麹の表情豊かなスピリッツだからこそ、コーヒーの香りに負けない存在感を発揮してくれます。そこに加えたのは、ハチミツとカカオのリキュール『Kohana Kokoleka』。オアフ島産ラムをベースにしたリキュールで、チョコレートの風味とコクを与えます」(Justinさん)

完成したカクテルは、チョコレートの甘さとコーヒーの苦味、塩味が調和した、クセになる味わい。「iichiko彩天」の力強さの奥に、ごまの香ばしさやココナッツを思わせるトロピカルなニュアンスも感じさせます。

「香ばしさが欲しかったので、ごま油でファットウォッシュ*1してごまの香りを移したウオッカを加えました。トロピカルなニュアンスは、塩を加えたパンダンリーフのシロップ由来。甘い香り、コク、塩味のアクセントに、薬草系リキュールのチナールも加えています。この苦味がカクテル全体の味わいを整えてくれます」(Justinさん)

*1 ファットウォッシュ:肉、バター、ナッツ、ごまなどの油脂の香りや風味を酒に移す技法。油と酒を混ぜ合わせ、冷凍庫に入れて油だけを凍らせたのち(酒は0℃では凍らない)、ろ過して香りの移った酒だけを取り出す。

ベーススピリッツに「iichiko心和」を使ったのは「ʻUla ʻUla」。


「iichiko心和」をベースに、トマトやフルーツ、テキーラによる明るく軽やかな酸味を加えた「ʻUla ʻUla」は、奥行きのあるうまみが特徴

「“ʻUla ʻUla”とはハワイの言葉で『赤』を意味します。名前の通り、赤い液色がポイントのこのカクテルは、パイナップルや青リンゴを思わせるフルーティーなアロマが印象的な本格焼酎『iichiko心和』に、クラリファイド*2したストロベリーの爽やかな甘酸っぱさ、トマトウォーターの青っぽいニュアンス、ほのかな塩味を合わせてみました。

『iichiko心和』の麦の豊かな風味を引き出しているのが、シングルバレルのレポサドテキーラ*3。テキーラ由来のスモーキーな余韻が麦のキャラクターとマッチして、奥行きのあるうまみとなって口中に広がります」(Justinさん)

*2 クラリファイド:素材の風味を残しながら、濁りや不純物などを取り除いて液体を透明化する技法。
*3 レポサドテキーラ:2カ月~1年熟成させたテキーラ。


このほか三和酒類の本格焼酎、日本酒、ワインを使ったカクテルが提供されました。軽快・辛口な日本酒「和香牡丹(わかぼたん) 八蝶 ヒノヒカリ」をベースに、ザクロやシナモン、ローズ、桃、梨、キウイといったフルーツや花のアロマを重ねて「安心院(あじむ) スパークリングワイン」でアップした「Makani」、甘い香りとまろやかで深みのある味わいの本格麦焼酎「いいちこスペシャル」でギムレットをツイストした「Huli」の2種です。

ラウンジを訪れたお客様が、Justinさんが提供するハワイの風をまとったカクテルを口にして、「これが焼酎ベースなの?」と驚く様子も見受けられました。


写真奥の右が「Makani」。ハワイの言葉で風を意味し、純米酒とスパークリングワイン、フルーツ、シナモンの香りを重ねる、フレッシュでエアリーなスパークリングカクテル。 左から2番目が「Huli」。「逆方向に進む」という意味がある言葉で、クラシックなギムレットスタイルと日本のフレーバーを行き来するという発想で名付けられている。麦焼酎とジャパニーズジン、かぼすジュース、柚子胡椒ベルモットなどを合わせた

独自の感性で、和のスピリッツと食材をカクテルに仕立てる

同じカウンターに立った髙橋さんはJustinさんのカクテルについて、「本格焼酎ベースのセイボリー*4系カクテルを、日本やハワイの食材でツイストしていて、レシピを聞いただけで斬新な素材の組み合わせにワクワクさせられた」といいます。
*4 セイボリー:甘さを抑え、ハーブや出汁などのうまみを活かしたカクテルのスタイル。


髙橋裕也さん(左)とJustin Parkさん

「ごまや柚子胡椒といった日本人にお馴染みの食材を、日本人にはない感覚でレシピに組み込んでいます。海外の人には日本の文化がこう見えているのかと、勉強になりました。

ファットウォッシュしたセサミウオッカのように事前の仕込みが必要な材料は私たちが用意したのですが、彼から共有された詳細なレシピも大変参考になるものでした。こうした材料を使ってJustinさんがどんな味わいを組み立てるのか、楽しみにしていたんです」(髙橋さん)

「日本人の好みを的確についてきたレシピだと感じた」と評したのは戸塚さん。

「ベースとなる本格焼酎、日本酒の特徴を正確にひもといてカクテルに仕立てています。日本人が見逃してしまうような微細なニュアンスまでもきちんと引き出しているところに舌を巻きました。たとえば『Makani』では、『和香牡丹』に潜んでいるザクロのような瑞々しさやシナモンを思わせるツンとした香り、華やかなローズのニュアンスを見事に捉えて副材料として表現しています。


THE KAHALA Lounge」ヘッドバーテンダーの戸塚信弥さん

どのカクテルもローアルコールではないですが、アルコール感を感じさせないのはすべての材料が美しく調和して1つのフレーバーを奏でているから。ベーススピリッツと原材料の調和を、それぞれのカクテルの中に見事に表現していただきました」(戸塚さん)


ハワイで広がる、和のスピリッツ×カクテルの可能性

Justinさんに本格焼酎のカクテルベースとしての可能性について伺いました。

「本格焼酎はハワイの多くの飲食店に置かれているスピリッツ。市民にとって身近な存在ではありますが、ソーダ割りでいただくことがほとんどで、カクテルベースとして認識している人は多くありません。とはいえ、ボディーのしっかりした『iichiko彩天』や麦の香りのインパクトが強い『iichiko心和』は、一般的な本格焼酎とはまったく別物。むしろ新ジャンルのスピリッツと言えるかもしれません。麹のニュアンスや味わいをどう活かすのか、カクテルベースとして非常に面白い存在だと思っています。



Justin Parkさん

ハワイのバーシーンにおいて本格焼酎が存在感を発揮するようになるのはまだまだこれから。それはつまり、この先には伸び代しかないことを意味しているんです。『Bar Leather Apron』でも本格焼酎ベースのカクテルを提案していますし、お客様に対して『このカクテルのベースは本格焼酎なんです』という説明もしています。このようにバーでの提供を続ける中で、少しずつ認知が広がっていくのではないでしょうか」(Justinさん)

Justinさんが運んできてくれたハワイの息吹は、「iichiko彩天」に新たな可能性をもたらしてくれたようです。


コンペティションを起点とした世界のバーテンダーの交流

ハワイで本格焼酎ベースのカクテルを発信するJustinさんに、髙橋さんのシグネチャーカクテル「Oedo Fashioned」はどう映ったのでしょうか。

炒った玄米の香りを移した自家製味醂(みりん)、焦がし醤油リキッドといった伝統的な日本の調味料にひと手間を加えて奥行きのあるうまみを表現し、「iichiko彩天」ならではのコクや香ばしさを引き出していまる「Oedo Fashioned」。“日本最古のカクテル”ともいわれる「柳陰(やなぎかげ)*5」から着想を得ており、「iichiko 彩 -IRODORI- カクテルコンペティション」日本大会では、味だけでなくそのコンセプトと、日本語でも英語でも覚えやすいカクテル名も評価されました。

*5 柳陰:味醂に焼酎を加えたお酒で、江戸時代に井戸で冷やして暑気払いとして楽しんだといわれる。「柳陰」は関西での呼び名で、関東では「直し」「本直し」とも。
「“日本最古のカクテル”ともいわれるドリンクから着想を得ている点がとても興味深いです。炒った玄米の香ばしさがいいね!」(Justinさん)


日本の伝統をバランスよく取り入れたカクテルの構成とストーリーに共感を示してくれたJustinさん。「来週にはうちのメニューのラインナップに加わっていると思います!」と冗談まじりに語るほど、味わいも気に入った様子でした。



髙橋裕也さん
「iichiko 彩 -IRODORI- カクテルコンペティション」日本大会の優勝カクテル「Oedo Fashioned」

最後に、日本とハワイのトップバーテンダーによる一夜限りのコラボレーションを髙橋さんに振り返っていただきました。

「一昨年、『Bar Leather Apron』にうかがった際は、Justinさんのカクテルの味わいはもちろん、1杯にかける姿勢に感銘を受け、バーテンダーとして大きな刺激を得たのです。そんなJustinさんのカクテルメイキングを間近にしながら同じカウンターに立つという貴重な機会をいただけたのも、『iichiko 彩 -IRODORI- カクテルコンペティション』のおかげ。海外の第一線で活躍するバーテンダーとのコラボレーションが実現したことに感謝しています」(髙橋さん)

昨年のコンペティションでは、江戸時代から受け継がれてきた材料を現代のバーテンダーがどう扱い、どんな1杯に仕上げるのかを伝えようとしたという髙橋さん。Justinさんも語るように、本格焼酎ベースのカクテルへのニーズがかつてないほど高まるいま、「Oedo Fashioned」を通じて、世界のあらゆる都市に「iichiko彩天」を届けたいという願いを語ってくれました。

「『iichiko 彩 -IRODORI- カクテルコンペティション』をきっかけに、バーテンダーとしてさらなる成長を遂げるとともに、『iichiko彩天』という素晴らしい日本のスピリッツの存在や、これを育んだ日本のカルチャーの魅力を世界中に発信していきたいと考えています」(髙橋さん)

今年で2回目を迎える「iichiko 彩 -IRODORI- カクテルコンペティション」日本大会は、11月6日にファイナルを迎えます。今年のテーマは「KOJI × CULTURES」。日本の食文化の根幹を担う麹と、各地に息づく文化や感性を掛け合わせ、「iichiko彩天」を主役にしたカクテルの創造性を審査します。

ジャパンファイナルの結果は、2027年春に初開催予定のグローバルファイナルへつながります。髙橋さんに続いて世界へ羽ばたくバーテンダーは果たして誰なのか、今後の展開にご注目ください。

「iichiko 彩 -IRODORI- カクテルコンペティション 2026」の詳細情報はこちら