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2026.09.16 EVENT REPORT / Tales of the Cocktail® 2026
ニューオーリンズで見えた“Shochu”定着への確かな歩み
2026年7月19日から24日まで、カクテル発祥の地として知られる米国・ルイジアナ州ニューオーリンズで、世界最大級のカクテル・スピリッツ業界イベント「Tales of the Cocktail® 2026」が開催されました。三和酒類は昨年に続き会期中にポップアップイベントを実施。世界各地から集まったトップバーテンダーたちが本格焼酎と向き合う姿からは、単なる珍しい日本の蒸留酒という枠を超えて、丁寧なものづくりや、麹が生み出すうまみと奥深さへの理解が着実に広がっている手応えが感じられました。「Tales of the Cocktail® 2026」の模様をレポートします。
文:菅 礼子 / 写真:Gonzalo Daniel Loayza / 構成:Contentsbrain
世界のバーシーンの最前線が集う、ニューオーリンズのカクテルの祭典
今年で24回目を迎えた「Tales of the Cocktail®(以降、TOTC)」は、世界各地からトップバーテンダーや蒸留酒メーカー、飲食業界関係者、カクテル愛好家、メディアが集い、教育セミナーやテイスティング、新商品の発表、ネットワーキング、アワードなどを通して、業界の最新動向を共有する国際的なイベントです。
メイン会場は昨年に続き、ニューオーリンズ中心部の歴史的な街並みとバー、レストランが集まるフレンチ・クオーターの玄関口、カナル・ストリート沿いに位置するザ・リッツ・カールトン ニューオーリンズです。
2026年は「Spark」をテーマに、業界を前進させる新たなアイデアや出会い、コラボレーションに焦点を当てた多彩なプログラムが展開されました。革新的な商品やカクテルが披露される一方、フィットネスやメンタルヘルスをテーマとしたセミナーなどの企画も数多く実施されました。酒類やカクテルの最新トレンドだけでなく、飲食業界で働く人々のウェルビーイングや労働環境にも目を向けた、包括的なイベントであることも特徴です。
真夏の厳しい暑さに包まれたニューオーリンズには、今年も世界各国から多くの参加者が集まり、昨年を上回る来場者数を記録しました。6日間の会期中には、市内113会場で400以上のイベントおよびブランドアクティベーション、60の教育セミナーが開催され、街全体を舞台としたカクテルの祭典として、大きな賑わいを見せました。
名店「Jewel of the South」で「iichiko」ポップアップ
三和酒類は会期中の7月20日、「iichiko」のポップアップイベントを開催しました。今年の会場は、フレンチ・クオーターにある名店「Jewel of the South」。1835年に建造されたレンガ造りのクレオール・コテージ⋆を修復・再生した歴史的建造物です。世界のバーシーンで高く評価され、2024年にはジェームズ・ビアード・アワードの「Outstanding Bar」と、「Spirited Awards®」の「Best U.S. Bar Team」を受賞。「North America’s 50 Best Bars」では6位に入りました。直近の2026年も「North America’s 50 Best Bars」で6位となり、併せて4年連続で「The Best Bar in South USA」に選ばれています。
⋆ クレオール・コテージ:「クレオール」は、植民地時代のルイジアナ生まれの人々と、そこで育まれた文化を指す。この地域文化を背景に成立した住宅形式で、平屋または1階半、勾配屋根、廊下を設けず部屋をまとめた間取りが特徴。建物奥に中庭を設ける例も多い。
この有名店を舞台に、今年も世界各国のバーシーンの第一線で活躍するゲストバーテンダーが集結。「iichiko彩天」「いいちこシルエット」「iichiko心和」を使い、それぞれの感性と技術を注ぎ込んだオリジナルカクテルを披露しました。
カウンターで腕をふるったのは、異なるバックグラウンドとスタイルを持つ、個性豊かなバーテンダーたち。全4シフトが組まれ、各回3組、計12組のゲストが登場。「iichiko」を使い、それぞれの感性と技術を生かした“Shochu Cocktail”を目当てに多くの来場者が詰めかけ、会場は終始活気に包まれました。
さらに店内だけでなく、「Jewel of the South」の中庭では、かき氷も提供しました。ここで使った氷は、金沢で100年以上の歴史を持つクラモト氷業のもの。米国に空輸された透明度の高い純氷で、米国の高級バーやレストランなど200店以上に採用されるなど高い評価を得ています。
かき氷づくりを担当したのは、ロンドンの「Waltz」、東京の「BAR BenFiddich」、大阪の「CRAFTROOM」、ニューヨークの「Martiny’s」から集まったバーテンダー4人です。それぞれが考案した「iichiko」入り特製シロップをかけたひと味違う4種類のかき氷が来場者に振る舞われました。当日は気温が35℃を超える猛暑となり、冷たいかき氷がひとときの涼を届けました。
iichikoポップアップ @Jewel of the South ゲストバーテンダー
第1組
「BAR BenFiddich(バー ベンフィディック)」/ 東京
鹿山博康(かやま ひろやす)
「THE KAHALA HOTEL&RESORT YOKOHAMA(ザ カハラ ホテル&リゾート 横浜)」/ 横浜
髙橋裕也(たかはし ゆうや)
「Martiny’s(マルティニーズ)」/ ニューヨーク
渡邉琢磨(わたなべ たくま)、Philip Song(フィリップ ソン)
第2組
「Tayēr + Elementary(テイラー エレメンタリー)」/ ロンドン
Monica Berg(モニカ ベルグ)
「SIDE HUSTLE(サイド ハッスル)」/ ロンドン
Leo Robitschek(レオ ロビチェック)
「CRAFTROOM(クラフト ルーム)」/ 大阪
藤井隆(ふじい りゅう)
第3組
「The SG Club(ザ エスジー クラブ)」/ 東京
後閑信吾(ごかん しんご)
「kumiko(組子)」/ シカゴ
百瀬(ももせ)ジュリア
「Bar Goto(バー ゴトウ)」/ ニューヨーク
後藤健太(ごとう けんた)、臼井小春(うすい こはる)
第4組
「Panda & Sons(パンダ アンド サンズ)」/エジンバラ
Nicky Craig(ニッキー クレイグ)、Iain McPherson(イアン マクファーソン)
「Indie Bartender(インディー バーテンダー)」創設者/バルセロナ
Danil Nevsky(ダニル ネフスキー)
「SIPS(シップス)」/ バルセロナ
Simone Caporale(シモーネ カポラーレ)
トップバーテンダーが3種類の本格焼酎の個性を見極め、腕をふるう
カクテルのベースに用いられたのは、それぞれ異なる個性を持つ3種類の本格焼酎です。アルコール度数43度の麦焼酎でありながら対照的なキャラクターを備える「iichiko彩天」と「iichiko心和」、そしてアルコール度数25度のまろやかな味わいが特徴の「いいちこシルエット」。バーテンダーたちは、それぞれの風味や特性を見極めながら、多彩な素材との組み合わせを試みました。
麹由来のうまみや奥行きを引き立てる日本の食材を取り入れたものをはじめ、緑茶や麦茶など日本のお茶を用い、真夏の暑さにも心地よい爽やかな飲み口に仕上げたカクテルも目立ちました。
中には、スイカやトマトといった夏の食材を取り入れ、日本の夏祭りの屋台から着想を得た1杯も。素材の組み合わせだけでなく、情景や記憶までカクテルに落とし込む、バーテンダーの豊かな発想が光ります。(本記事下部の「Photo Gallery」もお楽しみください)
また、複数のバーテンダーから聞かれたのが、「セイボリー(savory)」という言葉でした。単に甘さを抑えるだけではなく、本格焼酎が持つうまみや穀物由来の奥行きを生かし、食事との相性まで見据えて味わいを組み立てるアプローチです。複数の素材を緻密に重ねながら本格焼酎の個性を引き出した1杯は、まるでシェフが1皿の料理を組み立てるよう。複雑でありながら調和の取れた、繊細な味わいを生み出していました。
トップバーテンダーが3種類の本格焼酎の個性を見極め、腕をふるう
こうしたカクテルは、本格焼酎の個性をどのように捉え、どのような発想から生まれたのでしょうか。ここからは、参加バーテンダーの言葉を通して、その一部を紹介します。
「iichiko 彩-IRODORI-カクテルコンペティション 2025」JAPAN FINALの優勝者である「THE KAHALA HOTEL & RESORT YOKOHAMA」の髙橋裕也さんは、今回初めてTOTCに参加しました。同コンペティションでグランプリを得た「iichiko彩天」ベースのカクテル「Oedo Fashioned(オーエドファッションド)」は、この会場でも参加者から好評を得ました。
「コンペティションでは、まずネーミングを評価していただきました。日本人になじみのある“大江戸”という言葉と、海外でも広く知られている定番カクテル『Old Fashioned (オールドファッションド)』を掛け合わせた名前なので、手に取ってもらいやすかったのだと思います。江戸の食文化を支えてきた醤油(しょうゆ)や味醂(みりん)を使って、カクテルを作りたいと考えました。一見、カクテルには意外な組み合わせと思われるかもしれませんが、カクテルと一緒に楽しむ料理やおつまみにも、醤油や味醂は使われています。そうした味わいを、彩り豊かな1杯として広げていきたいという思いを込めた、セイボリーなカクテルです」(髙橋さん)
髙橋さんはこのほか、煎茶やハーブ、サンダルウッドを用いたカクテル「TEA ROOM」も披露しました。茶室に漂う畳の香りや静謐(せいひつ)な空間を想起させる1杯で、味わいだけでなく、その場の情景まで表現している点も特徴です。
また、ロンドンの「Tayēr + Elementary」から「iichiko」ポップアップへの初参加となったMonica Bergさんは、本格焼酎に柚子(ゆず)や抹茶、金木犀(きんもくせい)など和の素材を取り入れたカクテルが印象的でした。本格焼酎を使った感想を伺いました。
「『iichiko彩天』は柑橘のニュアンスがとても豊かで、後味はクリーンかつドライ。そのためカクテルに幅広く使うことができます。スピリッツでありながら、調味料のような役割も果たし、カクテル全体の香味を引き上げ、輪郭を鮮明にしてくれます。一方、『iichiko心和』には素晴らしい口当たりと奥行きがあります。控えめですが豊かな味わいがあり、スピリッツ主体のカクテルに美しく調和します。
『いいちこシルエット』には際立ったエレガンスがあります。柔らかく繊細な酒質のため、微妙なニュアンスが重要になるロングカクテルに最適です。他の素材になじみながらも存在感を失わず、口当たりと穏やかな果実味を加え、同時に、軽やかなボタニカルや花の香りを引き立ててくれます」
本格焼酎を使い慣れているバーテンダーのカクテル
本格焼酎をカクテルに使う機会が増えてきたバーテンダーたちは、今年の会場でどのようなカクテルを作ったのでしょうか。
「SG Group」代表の後閑信吾さんは、昨年に引き続いての「iichiko」のポップアップ参加です。後閑さんが率いるニューヨークの「Sip & Guzzle」は、「The World’s 50 Best Bars 2025」で39位に選出され、2026年には「North America’s 50 Best Bars」で首位を獲得。東京の「The SG Club」をはじめ、世界各地でバーを展開しています。後閑さんは今回提供したカクテルについて次のように話します。
「暑かったこともあり、スイカのハイボール『SUIKAWARI』はすぐになくなりました。柚子胡椒(ゆずこしょう)と備長炭のスモーキーな香りで焼き鳥を表現したセイボリーなカクテルには『iichiko彩天』を使用しています。また、『iichiko心和』を使った『HIYASHI TOMATO TREE』も人気がありました。今回は法被(はっぴ)を着て、夏祭りをイメージしながら、スイカ割り、焼き鳥、冷やしトマトをモチーフにしたカクテルでおもてなししました」
同じく、これまで「iichiko」のポップアップに参加してきたニューヨークの「Bar Goto」オーナー、後藤健太さんは、米国での本格焼酎を取り巻く現在の状況について次のように話します。
「主に大都市では本格焼酎の認知度は確実に高まってきています。業界関係者の間では本格焼酎への理解が広がっている一方、一般の方にとって、大都市以外ではまだ認知が十分とはいえません。だからこそ、こうした取り組みを継続して行っていくことが重要だと思います」
後藤さんが提供した「UMAMI MARY」にはリピーターも多く、本格焼酎カクテルが、「もう一度飲みたい1杯」として、着実にファンを増やしていることがうかがえます。会場では、「初めてでも飲みやすく、同じ麦焼酎でも味わいの違いを楽しめた」といった声も聞かれました。
バー業界の情報プラットフォーム「Indie Bartender」の創設者であり、バルセロナを拠点にバーテンダー、コンサルタント、教育者として活躍されているDanil Nevskyさんは2年ぶりの「iichiko」ポップアップへの参加。3種類の本格焼酎を使った印象を次のように語りました。
「さまざまな好みを持つお客様に楽しんでもらえるよう、3つの異なるテイストのカクテルを作りました。『いいちこシルエット』『iichiko彩天』『iichiko心和』はそれぞれ味わいが異なるため、その特徴から着想を得て、相性のよい食材を選んでいます。まだヨーロッパで本格焼酎をカクテルに使う機会は多くはありませんが、カクテル作りにとても相性のよいスピリッツだと感じています」
“Shochu”が世界のバーシーンに根づいていく確かな歩み
今回のイベントへの出展について、三和酒類 代表取締役社長の西和紀(にし かずのり)は次のように述べました。
「麹文化の中で育まれた本格焼酎は、世界のスピリッツの中でも唯一無二の存在です。『iichiko彩天』のような先鋭的な商品を感度の高いバーで使っていただくことで、本格焼酎ならではの魅力への理解や支持が着実に広がってきていると感じています。英国の酒類業界誌『Drinks International』のスピリッツランキングで今年“SHOCHU”が9位になるなど、本格焼酎の存在感が世界で高まっていることを示すデータもあり、手応えを感じています」
本格焼酎の認知には、地域や業界によってまだ濃淡があります。それでも今回のポップアップの会場で見えたのは、本格焼酎を単なる珍しい日本の蒸留酒としてではなく、そのうまみや麹、大麦由来の奥行き、食との親和性までを読み解こうとするバーテンダーの姿であり、それを美味しそうに味わう来場者の姿でした。
今回のゲストシフトのバーテンダーの中には本格焼酎を扱う頻度や慣れ具合に幅がありました。新鮮なカクテルベースとして新たな表現を生み出すバーテンダー。ふだん本格焼酎を使い慣れていてさらに踏み込んだ1杯を提案するバーテンダー。こうした出会いと試みの積み重ねの中に、“Shochu”が世界のバーシーンに根づいていく確かな歩みが感じられました。
「Martiny’s」の渡邉琢磨さんが「Spirited Awards®」米国最優秀バーテンダーに
今年もTOTCのクライマックスを飾ったのが、「Spirited Awards®」の授賞式です。業界で最も名誉ある賞の1つとされる同アワードは、昨年に続きニューオーリンズのフィルモア・シアターで開催されました。
ドリンクや料理、サービス、業界への影響力などを総合的に評価し、世界で最も優れたバーに贈られる「World’s Best Bar」には、シンガポールの「FURA」が選出。また、米国で活躍する優れたバーテンダーを称える「U.S. Bartender of the Year」には、ニューヨークの「Martiny’s」「L’Americana」「Midnight Blue」を率いる渡邉琢磨さんが輝きました。渡邉さんはこれまで、「iichiko」のイベントに何度も参加してくださり、本格焼酎を生かしたカクテルを提案してきたバーテンダーの1人です。
(Photo Credit: Caitlyn Ridenour / Tales of the Cocktail Foundation)
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